求めるのは進化した「心地よさ」の形:RAKUNECK誕生秘話
RAKUNECKが完成したとき、それはひとつの到達点でありながら、デザイナーにとっては新たなスタートでもありました。なぜなら、「快適さ」や「美しさ」という概念は、時代や人の価値観によって常に変わり続けるものだからです。デザインは一度完成したら終わりではなく、ユーザーの声、社会の変化、そして技術の進化によって常に問い直され、更新されていくべきものだと、デザイナーのCaso氏は考えています。
これからのプロダクトデザインにおいて、特に重要になると考えているのが「パーソナライズ」と「サステナビリティ」です。たとえば未来のヘッドレストは、ユーザーの体型や姿勢に合わせて自動調整される機能を持つようになるかもしれません。センサーが身体の傾きや緊張を感知し、最適な形に変化してくれるようなプロダクト。そんな“反応するデザイン”は、AIや素材技術の進化とともに現実的な未来として見え始めています。
さらに、製品が生まれる過程そのものにも変化が求められています。大量生産から多様化・個別化へのシフト、環境に優しい素材や製法の選択、使い捨てではなく、長く使い続けられる耐久性と修復性。RAKUNECKの今後のモデルでも、こうした社会的な責任を前提とした設計が欠かせない要素になると考えられています。美しいデザインは、社会や環境に対しても美しくあるべき。そうした意識が、未来の「当たり前」になっていくと考えています。
「個人的には、今後ヘッドレストに限らず、医療やヘルスケア分野でのプロダクトにも挑戦してみたい」と、Caso氏は語ります。たとえば、リハビリを助ける補助具や、患者の心理的負担を減らす器具など。人の身体と心に密接に関わるデザインに携わることで、生活の質を根本から向上させる力を持った製品を生み出していきたい。それは単に便利な道具ではなく、「人を支えるための存在」としてのデザインのあり方を探る旅なのです。
そして、これからもデザインの道を歩む未来の自分に伝えたいこと、それは「失敗を恐れず、過程を楽しむこと」です。良いデザインは一朝一夕では生まれません。何度も立ち止まり、やり直し、問い直す。その連続の中でこそ、本当に人に届くものが見えてきます。RAKUNECKがそうであったように、迷いながらも、最後には「心から納得できる形」にたどり着ける。それがデザインの持つ本当の力だと信じています。