KURUMARCHE誕生秘話

1.運命の出会い?新しい家族が仲間入り
時は2019年大晦日、私は初めての車を何にしようか悩みながら、カーセンサーやグーネットを手当たり次第に検索していました。
しかし、「ああでもないこうでもない」といまいち決断できないまま、ダラダラと見続けていました。
(確か本当に欲しい車は大体予算オーバーだったので気乗りしなかった記憶)
当時は、頭文字Dに出てくる国産スポーツカーやドイツ車などが好きで、それ以外には目を向けていませんでした。
ある時、今思い返しても本当に思い出せないのですが、本当にひょんなことから「イタリア車」のページを覗いてみようと思いました。
これが運命の始まりでした。
フェラーリやマセラティ、アルファロメオ、ランチアといったメーカーや車種は知っていましたが、特に興味があった訳ではありませんでした。
しかし、なぜかそこで私の脳裏に幼い頃の記憶がよぎりました。
小さい頃にテレビで見た「世界のくるま」的なVHSビデオ。
そのビデオでは、有名どころの輸入車は一通り紹介されていました。
ドイツならフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ。
イギリスならジャガーやローバー・ミニ。
イタリアならフェラーリやランボルギーニ、アルファロメオ…
「アルファロメオ…?」
おぼろげに浮かんできたのは、テレビに映った変な顔をした、変な形の、変なテールランプのワインレッドのアルファロメオでした。
「アルファロメオgtvだ!」
すぐさま「イタリア車」のページから「アルファロメオ」へと進み、「gtv」を検索した時、たまたま目に入ったクルマと運命的出会いをします。

目にして数分で、この子をお迎えすることを決断しました。
特にアルファロメオが好きだった訳でもありません。
特にgtvが昔から好きだった訳でもありません。
しかし、この子には何か感じるものがありました。
「ついに車を買ってしまったか」というワクワク感と、自分の趣味嗜好と縁もゆかりもないクルマを選んだフワフワ感。
そして、ちゃんと維持し続けられるのかの不安が頭をよぎり、この時期は他のことをしていてもほぼ上の空でした。
購入してもすぐに納車されるわけではないので (納車整備が色々あるらしい)、首を長くして待っていました。
そんな形で2020年6月には新しい家族が我が家に仲間入りしたのです。
この後、この子の存在が、KURUMARCHEを立ち上げる大きなきっかけをくれることになります。
2.愛着を持つと共に直面する車離れの闇
アルファロメオgtvというクルマは、元々マニュアルしか設定がありません。
今どきの車は、ほぼ全てオートマティックですし、昔のクルマでも一般的にはマニュアル・オートマティック両方を選ぶことができますが、このクルマは違いました。
この子を我が家に迎えてからは、マニュアル車を上手く走らせられるように練習する日々が続きました。
しかし運転というのは日常的なものなので、日に日に上達していきました。
まともに運転できるようになるにつれ、長距離ドライブや旅行にいく余裕も生まれてきました。
「クルマで好きなところへ好きなように向かいたい (旅したい)」
私だけでなく、時間や場所が縛られる電車やバス等の旅が嫌いな方は、そう考えているはずです。

クルマに愛着が湧くにつれて次第に、単純な近場への買い物でも想い出に感じられるようになりました。
私は元々、小さい頃からクルマが好きだったこともあり、運転に疲れたり、運転を面倒だと思ったり、それこそマニュアルの操作は、ある程度のスキルが必要なのは確かなのですが、気持ち的に「難しい」と思ったことはありませんでした。
それはやはり、「クルマ」という大きな括りに愛着を持っていたことに加え、この子への愛着が湧いたからだと思います。
しかし同世代の友人たちの話を聞いていると、自分の意見は少数派であることが分かりました。
彼らは明らかに、この子のようなローテクなクルマと比べれば、乗り心地も良ければ、運転も簡単で、色々と便利な機能も付いたクルマに乗っている。
そこで見えてきたのが、決してクルマの乗り心地が良くても、運転が簡単でも、もっと大きい括りで言えば、「買ったままの状態」ではクルマに愛着は湧かないということでした。
昨今ではニュースなどで「若者の車離れが~」のような内容がよく取り上げられますが、ここで私が注目したのは、
・なぜ人はクルマに愛着を持つようになるのか?
・なぜ現代はクルマへの愛着が持ちづらくなっているのか?
という部分です。
愛着とは何なのか、心理学的な詳細は難しい話になってしまうので割愛しますが、簡単に説明すると、愛着や主観的な思い入れは、サンクコスト効果 (コンコルド効果とも呼ばれる) によるものだと考えられます。
これまでに費やしたお金や時間・労力・感情などが多ければ多いほど、愛着は湧くものだと考えられています。
(皆様も心当たりあるものが、いくつかあるのではないでしょうか?)
・何年も推しているアイドルのグッズを買い続けてきたので、推し活の対象を変えることは考えられない
・欠点もあるが何年も付き合ってきたので、別れるなんて考えられず、好きなことに変わりはない
などが代表例です。
これを私の経験に置き換えて考えてみると、アルファロメオよりも各方面でスペックの高いクルマは沢山あります。
ほとんどの日本車がそうです。
しかし私が、この子に愛着が湧いたのは、
・上手く走らせようと練習に費やした時間、労力、感情
・一緒に長い旅を楽しんだ時間、労力、感情
・完調な状態に保つために費やしたお金、時間、感情
など、クルマ自身には全く関係のないことばかりです。
この時、この子に必要な各種パーツを探すことが日常的になりつつありました。
そこで見えてきたのが、カーアクセサリーの市場、もっと大きい括りでクルマ業界は、そもそもクルマに興味がある人しか相手にしていないということでした。
販売している商品のモノ自体は良くても、そのターゲット構造を問題視したのです。
つまり、既に愛着を持っている人に向けた商品しか作っていないのです。
「若者の車離れ」が叫ばれている昨今、この状態を続けていれば、やがて本当に全ての人の気持がクルマから離れてしまうでしょう。
しかし、車好きの方がいくら声をあげたところで、そもそも愛着が無いため、その方たちの耳には入りません。
(それどころか、うるさい車オタクとして余計に嫌われてしまうでしょう)
しかし、私はここをもっと改善できるアプローチがあると考えました。
「ユーザーも気づかないうちに愛着を持つ」
クルマに特に愛着が無い方でも、広い括りでの「移動」や「旅行」に興味がある方はとても多いはずです。
ただそこで、「クルマ」が特に愛着のない選択肢になっているだけなのです。
どんなアプローチであっても、「買ったままの状態」に自分なりの一工夫ができれば、少しでも自分のクルマに愛着が持てるようになれると考えました。
そして、「クルマに愛着を持てるようになれば、自由に移動できるクルマとの時間を、より想い出にでき、人生がより豊かなものにできる」という自信が生まれました。
ここからクルマとの想い出を増やすことに特化した商品を開発するKURUMARCHEというプロジェクトが立ち上がりました。
3.苦労の連続。商品化までの道のり

2022年春先より、ついにKURUMARCHEの商品企画を始めます。
私の中で、必ず商品化するモノというのは、この時点である程度決まっていました。
ここからは、しばらく理想の仕様を具現化できる製造工場を見つけるために、商談に明け暮れました。
「いくつか商談を重ねれば、製造工場の候補がいくつか出てくるだろう」
そう考えていましたが、現実は甘くありませんでした。
自分の理想を実現できる工場が見つからない
これは予想外でした。
私はこれまでも他の商品の企画やマーケティングに携わった経験はありましたが、予測できなかったことがいくつかありました。
1.既製品をベースとした商品化しか出来ない工場が多い

既に市場に流通している商品をベースとして、中身はそのままで、パッケージだけを変更したり、ちょっとだけ仕様を調整するぐらいの製造しか出来ないという工場が多かったのです。
KURUMARCHEでは「他社の商品で良いなら商品化しない」という理念があり、製造する商品は完全オリジナルで製造できないといけません。
商談をした多くの工場が既製品ありきでの製造でした。
2.円安による原価の不透明性

ちょうどこのKURUMARCHEプロジェクトを始動して以降、為替の状況が悪化していきました。
「国内で製造しても為替が関係あるのか?」
という疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、国内製造であっても原料や資材などは海外から輸入しているものも多いです。
つまり、円安になればなるほど商品原価は高騰してしまいます。
プロジェクト始動のタイミングが1ドル110円程度、このページの執筆時点が140円程度です。
海外で全て製造した商品を輸入する場合、この差額だけで28%もの原価高騰が発生する計算になります (少し極端な計算ではありますが)。
このイメージが湧きにくい方は、今まで1食1,000円で食べれていたランチが1,280円になるようなものだと考えてみてください。
1,000円×30日=30,000円だったランチ代が、1,280円×30日=38,400円もかかってしまうようになります。
月換算したら結構痛い出費ですよね。
それくらい為替の変動は小売業者にとって影響があるものなのです。
当然、円安が進み続ける状態で見積もりを出してもらっても工場側は「あくまでもその時点での見積もり」しか出せません。
実際に私が発注を行うタイミングでは、もっと原価が高騰してしまう可能性もあるということです。
こればかりは、工場が悪いとかではないのでしょうがないことですが、このプロジェクトを始動させた理由の1つとして、前述した通り「クルマに特に愛着が無い」方をターゲットとしていたこともあり、原価設定は非常にシビアな内容です。
この原価問題に直面し、他社商品が車好きだけをターゲットにしているのも多少納得できる部分がありました。
しかし、私はそれでも最初に自分が掲げた目標を見失わずに、原価問題に向き合い続けていきました。
3.一元化の難易度
できるだけ品質の高い商品を、手に取りやすい価格で販売するためには、如何にスムーズな運営をできるかがカギになると考えています。
そのためには余計な人件費をかけないというのが私のモットーです。
人件費をかけ、それを回収するために商品価格を高めに設定するくらいなら、人件費を削ることで価格を安くする方を選びます。
経営的にはこの考え方は間違いなのかもしれませんが、このプロジェクト自体が運転手さんたちがクルマに愛着を持てるように、そのクルマたちのために良い商品を作りたかったというのが原点です。
「多くの人に認知されずとも、知る人ぞ知るブランド」になれればそれで良いのです。
だからこそKURUMARCHEでは少数精鋭体制で臨むことになるのですが、その際に重要なのが発注業務の一元化でした。
資材や原料などを別々の工場で製造したり、梱包発送をまた別の業者に委託をする手続きが必要になってくると、少数精鋭ではスムーズにいきません。
発注から販売までを、1通のメールのみで完結させられるような製造業者との協力体制が不可欠だったのです。

イメージ的には上記です。
厳密には一般的メーカーの発注時には複数の工場に発注し、それぞれが完成したら1箇所にまとめて梱包を行ったりします。
この作業は各協力業者への連携やり取りが必要なので、一般メーカーでは人件費がそれなりに必要となる部分です。
私はここを一元化できるように、製造から販売まで1オペレーションで成り立つように各方面へ協力を打診してきました。
これらの問題以外にも小さなトラブルはありましたが、主にこの3つがKURUMARCHEの企画から販売までに3年もの期間を有した原因です。
しかし、色々な苦労がありながらも突然転機が訪れるのです。
4.全ての苦労が解消!? KURUMARCHE本格始動
時は2024年10月、気づいたら2年以上が経過していました。

この子とは旅を続けていました。
お迎え当時は純正ノーマルの17インチホイールでしたが、他のアルファロメオ純正18インチホイールに。
私はというと、2年経過しても各方面へのアポイントメントと商談を続けていました。
流石にこれだけの月日を重ねていると、ダメなものはダメなんだと思い込み、商談時に伝える要件も少しずつ緩くしていたのを覚えています。
条件を緩くすれば、いくつか商品化が実現できそうな製造工場の候補も増えてきました。
それでも自分の中の理想との乖離に葛藤して、結局発注まで進まない。
商談に時間を割いてくれた工場側としてはいい迷惑です。
「妥協して相談に乗ってくれた工場と提携するか、プロジェクト自体を諦めるか」
そんなことを考えながら新規工場と商談をしていたところ、理想を全て実現化するように協力してくれる工場が現れたのです。
私の企画による商品の開発や、為替リスクの問題、発注から販売までの一元化などをカバーできるようになりました。
「諦めなければ道は開ける」を体感した瞬間です。
ここからはサンプルのクオリティ追求に数ヶ月ほど四苦八苦するのですが、そんなものはこれまでの苦労に比べればなんでもありませんでした。
その時の私は、協力業者への感謝の気持ちと、早く素晴らしい製品を1台でも多くのクルマたちに届けたいという熱量に溢れていました。
ここからは商品の完成まで、サンプル品のチェックやデザインの制作などを進めます。

こちらはRAKUNECKのサンプルチェックを手伝ってくれているスタッフさんの手。
すごく気持ちよさそうに協力してくれました。
運転の邪魔にならない設計で、かつ快適に運転できる設計。
蒸しパンのような感触が快適そうでした。
そしてまた時は流れ、2025年8月。
ついに念願の第一陣商品であるRAKUNECK (ラクネック) をリリース。
今後も商品開発を抜かりなく行い、本当の良いものを全国のクルマたちと運転手さんの元へ届ける活動を続けていければと考えています。
既に販売している商品群に関しても、ユーザー様の意見を真摯に受け止め、今まで以上により良いモノへアップデート出来るように運営して参ります。
5.これからの物語を一緒に創りませんか?

ここまでKURUMARCHEの誕生秘話を読んでいただき、ありがとうございました。
私たちKURUMARCHEは前述した通り、少数精鋭での運営を心がけることで、無駄な人件費をカットし、その分を商品価格へ反映させるように努力しています。
その一方で、人件費をカットするということは価格を抑えることができても、多くの知恵を集めにくいということでもあります。
私たちが販売する商品の価格帯は「品質を考慮すれば安い」という自信はあるものの、単価だけ見れば決して安いものではありません。
ですので、今後の商品開発や既存商品の改良を、是非ともユーザーの皆様からいただくご意見を踏まえて行っていくことで、皆様と一緒にKURUMARCHE製品のコストパフォーマンスを向上させたいと考えています。
私たちはその意見全てに目を通し、一台でも多くのクルマたちと運転手さんにとってプラスになる内容なのであれば、その投資は惜しみません。
・商品へのレビュー
・メールやLINEへのご意見
・SNSでのメッセージ
など、どんな形でも構いませんので、KURUMARCHE製品の感想・意見を遠慮なくお寄せいただければ幸いです。
皆様の1意見によって、クルマに愛着を持つ人が1人でも増え、多くの運転手さんがお買い求めしやすい製品が提供できるようになると私は信じています。

この物語はまだ序章にすぎません。
私たちは、これからも多くの困難に立ち向かうことになるでしょうし、その度に乗り越えることで、車離れと向き合い続けます。
KURUMARCHEの理念に共感いただける方は、これからも私たちの活動を応援していただけると嬉しいです。
一緒にKURUMARCHEを創って参りましょう。
長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
KURUMARCHE
代表 彦尊瑛