「機能と美しさは矛盾しない」という信念:RAKUNECK誕生秘話
RAKUNECKのデザイナーであるCaso氏は、建築分野でパラメトリックデザインを学び、その後プロダクトデザインへと領域を広げてきました。複雑な構造や条件を数式とロジックで整理しながら、美しさと機能性を同時に成立させるという考え方は、彼の根底にあるデザイン哲学です。自身のスタイルに大きな影響を与えたのは、ザハ・ハディッドやフランク・ゲーリーといった建築家たち。自由な曲線と数学的構造の融合を見たとき、「デザインとは、感性と理性のどちらも必要だ」と気づいたと語ります。
パラメトリックデザインの面白さに出会ったのは、大学時代のことでした。それまで感覚で作ることが主流だった設計に対し、数値とルールで形を導き出せるこの手法に出会ったとき、世界が一変したような衝撃があったといいます。最初に手がけたのは建築物の屋根の形状デザイン。依頼者が求める条件を組み込んで、複数のパターンを動的に生成できる仕組みを構築したその経験が、今でも記憶に強く残っているそうです。
その後、より生活に近い領域へデザインを届けたいという想いが芽生え、建築からプロダクトへも関心が広がっていきました。手で触れ、使い続けることで初めて良さがわかるもの。そうした日常に寄り添う製品こそ、自分のデザインが役に立つ場所かもしれないと感じたのです。そして、自身が設計する上でずっと持ち続けている信念が「機能と美しさの融合」。これはRAKUNECKにもそのまま踏襲されています。
どんなに機能的でも、美しくなければ人の心には届かない。逆に、どれほど見た目が洗練されていても、使いにくければ意味がない。だからこそ、設計の初期段階から「見て触って心地よいか」「使って身体が楽か」という両方の視点を常に行き来しながら、全体像を描いていく。それがCaso氏の仕事の流儀です。
今後もパラメトリックデザインを軸に、環境に配慮したプロダクトや、ユーザーの感覚に寄り添う設計に挑戦していきたいと話すCaso氏。RAKUNECKは、そのキャリアの中で生まれたひとつの集大成とも言えるプロダクトです。静かで、力強くて、嘘のないかたち。その背景には、デザインを愛し、信じて進み続けるひとりのデザイナーの歩みがあります。