Caso氏が込めた想いと哲学:RAKUNECK誕生秘話
RAKUNECKのデザインに込められた最も根本的な想いは、「見た目の美しさ」と「快適な使い心地」のどちらも諦めないことでした。多くの製品がどちらかに重きを置く中で、このヘッドレストは最初から最後までその両立に挑戦し続けたのです。外見が美しくても、使いにくければ意味がない。かといって、使いやすさだけを優先して無骨な形になってしまっては、心が動かない。だからこそ、設計の初期から、デザインと機能を対等に扱う姿勢が一貫して貫かれていました。
その背景にあったのは、運転中の身体への負担というリアルな課題です。長距離を走るとき、ふとした渋滞での停滞時間、あるいは短時間でも毎日の運転が積み重なることで、首や肩への疲れは確実に蓄積していきます。RAKUNECKは、それを「感じさせないようにする」のではなく、自然に「軽くしていく」という方向で解決を目指しました。そのため、人体のカーブをやさしく支える形状と、長時間の使用でも違和感が出にくい素材感に細やかに配慮されています。
この製品が目指したのは「使うことで、いつの間にか心も身体も楽になる」という体験です。そして、その体験をどう表現するかが、デザイナーにとって大きな挑戦でもありました。そこで生み出されたのが、曲線を中心に構成されたライン。シャープすぎず、丸すぎない。そのちょうど良いバランスこそが、人の目に安心感を与え、使用したときの違和感も最小限に抑える秘訣となっています。
とはいえ、ただ曲線を描けばよいというわけではありません。RAKUNECKのフォルムは、車内の他のパーツとの調和も考え抜かれており、インテリアの一部として美しく成立するように設計されています。車という空間において、単体で目立つのではなく、全体の印象に溶け込むような存在感。それが、このヘッドレストに与えられた役割でした。
最終的なデザインが完成したとき、そこには強い達成感と「これはきっと多くの人に受け入れられる」という確信がありました。それは、見た目の完成度ではなく、「使い続けたときに感じる満足感」に対して向き合い抜いた自負から生まれたものだったのです。RAKUNECKは、使う人の目に見えない部分にこそ価値が宿るという哲学を、形に変えた一例だと言えるでしょう。